民家やマンションに有料で観光客を泊める「民泊」で、大阪市が4月末までに、市の認定や旅館業法の許可を得ていない「ヤミ民泊」800施設超に営業中止を指導した。市内には違法な民泊が1万施設以上あるとされるが、運営者に連絡がつき指導にこぎ着けたのは1割に満たない。指導した施設の約半数は営業を中止するか認定・許可を得たが、残りは違法状態のまま。市は対応に苦慮している。
宿泊営業をするには旅館業法に基づく許可が必要だが、同法の適用が除外される国家戦略特区を導入した自治体では、認定業者による民泊営業ができる。大阪市は特区制度を活用し、昨年10月末に民泊条例を施行した。住宅宿泊事業法(民泊新法)が今月の国会で成立し、来春から全国で民泊が解禁されるが、特区民泊はそれに先行して始まっている。
ヤミ民泊を正規参入に移行させる狙いがあったが、認定を得たのは今月14日現在で316施設にとどまる。大阪市が昨年10月に開設した通報窓口に4月末までに3011施設について「スーツケースを引いた外国人が出入りしている」「夜中に騒いでうるさい」などの苦情が寄せられた。うち818施設は運営者が確認でき、営業中止を指導した。市は引き続きインターネットでヤミ民泊の動向を追っているが、仲介サイトは室内の写真しか載っていないものもあり、所在地の特定は容易ではない。担当者は「数が多く追いつかない」と言う。
昨年4月から特区民泊を始めた大阪府も違法民泊の把握を急ぐ。府の保健所が管轄する地域にあるとされる約300施設のうち、15~16年度に197施設を特定。84施設が営業を中止、8施設が旅館業法の許可を取った。